Q.医療法人の理事長が出身大学(国立大学)の施設の拡充を支援するために寄附を行う場合、その寄附金の全額を損金に算入することができるでしょうか?

医療法人税制

A.その施設が完成後すみやかに国等に帰属することが明らかである場合には、その寄附金は国又は地方公共団体に対する寄附金に当たります。しかし、国又は地方公共団体に対する寄附であっても、理事長の出身大学であるという関係のみであって、その大学がその医療法人の業務に全く関係ないのであれば、理事長が個人として負担すべきものということになり、損金算入はできません。

1.寄附金の損金算入
(1)国又は地方公共団体に対する寄附金及び財務大臣の指定した寄附金
  これらの寄附金(国又は地方公共団体に対する寄附金のうち、その寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除きます)は、その全額を損金に算入することができます。
 (2)特定公益増進法人等に対する寄附金及び一般寄付金
  一定の損金算入限度額を超える部分の金額は、損金に算入することができません。

2.寄附金の計上時期
 法人税法における寄附金の支出は、その寄附金が実際に支払われるまでは、なかったものとされます。したがって、次のように取り扱うこととなります。
(1)未払金に計上した寄附金
 実際に支出した年度の寄附金として扱います。
(2)仮払金として経理した寄附金
 その実際に支出した年度の寄附金として扱います。
(3)手形で支払った寄附金
 手形が決済された年度の寄附金として扱います。

3.医療法人の理事長による出身大学への寄附
 上記1の通り、国又は地方公共団体に対する寄附金は、全額の損金算入が可能です。国立又は公立の学校等の施設の建設又は拡張等のために資金を集める目的を持って設立された後援会等に対する寄附金であっても、その施設が完成後すみやかに国等に帰属することが明らかである場合には、その寄附金は国又は地方公共団体に対する寄附金に当たるとされています。
 しかし、法人が支出した寄附金であっても、その法人の役員等が個人として負担すべきであると認められる場合には、その寄附した金額はその負担すべき者に対する給与とすることになっていて、損金算入はできません。
ご質問のように、医療法人の理事長が出身大学(国立大学)の施設の拡充を支援するために寄附を行う場合、国又は地方公共団体に対する寄附であっても、理事長の出身大学であるという関係のみであって、その大学がその医療法人の業務に全く関係ないのであれば、理事長が個人として負担すべきものということになります。