Q.医療法人の理事長が個人で不動産を所有しています。その不動産をその医療法人に譲渡する場合の留意点について、教えてください。

医療法人税制

A.そのような取引は利益相反行為であるといえます。それゆえ、監督官庁に特別代理人の選任を申請
することが必要となります。また、時価の2分の1に満たない価格での譲渡である場合には、時価で
の譲渡とみなされ、譲渡所得税が課税されます。このように、医療法人とその理事長と間の取引には、
利益相反行為や税金の面で留意することが重要です。

1.利益相反行為となる取引
 医療法人に関して、次のような取引は、利益相反行為であるといえます。
(1)理事長が自己又は第三者のために医療法人と行う取引
直接取引と呼ばれるもので、例えば次に掲げるものが該当します。
・理事長と法人との間の売買契約
・理事長から法人への利息付きの金銭貸付け
・法人から理事長への債務免除
・理事長が受取人となる法人による約束手形の振出
・法人から理事長への贈与
(2)医療法人が理事長の債務を保証すること、その他理事長以外の者との間における、医療法人と理事長との利益が相反する取引
間接取引と呼ばれるもので、例えば次に掲げるものが該当します。
・法人が、理事長の第三者に対する債務を保証する契約
・法人が、理事長の第三者に対する債務を引き受ける契約
 たとえ理事長と医療法人との間の取引であっても、理事長の法人に対する無償贈与といったものは、法人に不利益が生じる恐れがありませんので、利益相反取引ではありません。

2.特別代理人の選任申請の必要性
 理事長個人と医療法人との間で利益の相反する行為をする場合は、理事長が医療法人を代表するこ
とは認められていないことから、医療法人を代理する特別代理人の選任が必要となります。
具体的には、利益相反行為を行う場合、社員総会(財団なら理事会)において特別代理人の候補者を
選んだ後に、厚生労働大臣又は各都道府県知事等の監督官庁に特別代理人の選任を申請します。そして、特別代理人の選任が監督官庁により行われた後で、その利益相反行為を行うことになっています。

3.時価と著しくかけ離れた価格での譲渡である場合
 医療法人の理事長が個人で所有する不動産について、その法人への譲渡を行った場合に、時価の2
分の1未満の価格での譲渡であれば、時価による譲渡があったものとみなされて理事長に対する譲渡
所得税が課税されることになります。また、医療法人に関しては、時価と実際の購入価格との差額が
受贈益とされて、法人税が課税されることになります。